【業界史上初!?】芝浦スタジオ5階「防音強化工事」の裏側を大公開!

いつも芝浦スタジオをご利用いただき、誠にありがとうございます。
今回のブログでは、今春3ヶ月間に渡って行われた、芝浦スタジオ5階の改修工事における「防音強化」に関するレポートをご紹介します!

このブログは約3分で読む事ができます。

(1) 改修工事の背景:時代と音響システムの進化への対応

芝浦スタジオは1987年のオープンから38年が経過しましたが、その間にコンサート現場で使用されるスピーカーシステムも大きく進化を遂げています。

 
近年、特に顕著であったのが、現代の楽曲に対してサブウーファーが発する40Hzから63Hz帯域の低音成分が以前に比べて強く響く傾向が見られました。

隣接するスタジオに影響が生じる時があった為、
この課題を解決すべく調査を行い、改修工事を行うことを決定しました。



(2)
浮き床構造の刷新

今回の改修工事における主要な変更点は、「浮き床」構造の刷新と、スタジオ間固定壁の強化です。

『見た目は変わらずとも、プロは必ず音でわかる。』
『改修と思わず、スタジオを作り直すぐらいの気持ちで。』

という強い方針のもと、構造上の限界まで挑んだ大規模な工事になりました!

そもそも「浮き床」って?  ⇐詳しくはクリック!
「浮き床」とは・・・
床の振動が建物の躯体へ直接伝搬することを抑制するための特殊な構造を指します。

具体的には、質量を有するコンクリート製の床が、防振ゴムやグラスウールといった弾性体の上に設置されることで、床が「浮いた」状態を形成します。

この構造により、ドラムやベース、PAスピーカー(サブウーファー)の低音域の振動エネルギーが、直接建物構造体へ伝わることを抑制します。

振動の伝搬は隣室や下階への音漏れの原因となるため、大音量にも耐えうる遮音性能が必要なリハーサルスタジオにとって「浮き床構造」は絶対条件とされています


🛠️ 防音強化のポイント

「鉄骨下地方式のコンクリート浮床構造」に刷新!

まず、旧来の浮き床を全て撤去する所から始まりました。
これまで501stに採用されていた浮き床は「グラスウール敷きコンクリート浮床」といって、オープン当時は主流な防音手段でしたが、近年のサブウーファーの特性と相まって、低音の音漏れに繋がる原因の一つとなっていました。

新たに採用したのは「鉄骨下地方式のコンクリート浮床構造」という工法。
防振ゴムを支持材として、従来よりも重量と剛性を高めた構造です。
この変更により、既存の共振帯域を回避し、20Hz以上の周波数帯域で振動がなだらかに減衰する理想的な防振特性を実現することができました!

スタジオ間ブロック壁の強化スタジオ間の壁体も強化!

床面のコンクリートの厚みも増強、浮き床下の空間も最大限確保し、音響エネルギー密度の低減に努めました。
そして、501スタジオの既存の浮遮音壁の裏側には重量ブロック壁を新設し、スタジオ間の固定遮音壁を二重構造といたしました。
これにより壁体の質量が増加し、空気音の遮音性能が向上しています。
 

 (3) 気になる改修の効果は?

測定結果は・・・『大成功!』

遮音性能の劇的な向上が見られました。
改修工事後の報告会にて、測定されたデータを元にその変化に驚きました。

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・63Hz帯域の遮音性能(遮音等級)
改修前D-60 → 改修後
D-70~D-75へと向上!
音響専門家も注目する2~3ランクに相当する大幅な改善です。
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・125Hz帯域の遮音性能(遮音等級)
改修前D-80~D-85 → 改修後
D-85~D-90へと向上!
1ランクの改善が確認されました。
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D値(遮音等級)って? ⇐詳しくはクリック!
D値とは、建築物の遮音性能を示す指標です。
壁や室間等の「音圧レベル差」を測定し、結果のD値が大きいほど遮音性能が優れていることを示します。

D値の遮音等級には基準となる周波数特性があり、音源室(音を出すスタジオ)で発生させた計測ノイズの音圧レベルが、受音室(音が聞こえるスタジオ)でどのくらい減衰しているか、125Hz~4kHzの5dBステップの基準ラインを全て上回る遮音等級曲線によりD値を評価します。

今回の改修工事では、スタジオの63Hz帯域の低音域の遮音特性に着目しており、
便宜的に遮音等級曲線を評価外の63Hz帯域にも延長してD値による評価を行いました。

最も課題であった40~63Hzの共振帯域において、10~15dBの振動減衰効果が得られ、
音圧レベルに換算すると、2~3ランク相当まで改善されました。
※125Hz以上の帯域についても、期待以上の遮音性が保たれている事を確認できました。

 
聴感上の印象も大きく変わりました。
改修前、楽曲によってはサブウーファーの低音が部屋中に充満し、壁全体から音が鳴っているように感じたものが、改修後は低音域が明らかに小さくなり、通常の空気音の透過のように感じられるようになりました。

ここまで大幅に改善したのは、単に壁の質量を増しただけでなく、浮き床構造の変更による防振特性の改善効果が極めて大きかったようです!


(4) 電気効率の向上

今回の改修工事では主要な防音対策に加えて、電源についても見直しました。

・キュービクルからの配線ケーブル、ブレーカーを一新。
電気配線を一から見直し、配線した事で電気の効率が良くなりました。
電圧の安定性が向上し、電圧降下(ドロップ)が起こりにくくなったことはもちろん、
音響機材、楽器への電力供給がよりスムーズかつ安定して行われます。
また、この度の改修でグランドが接地グランドになりました。

 

・電源容量Up!
今回の改装に伴い、下記の通り容量がアップしています。
501st  Total 150A →  220A

 


(5) 担当業者様のご紹介

今回の改修工事は、日本の建築音響のパイオニアとして半世紀の歴史を誇る、
日本音響エンジニアリング株式会社の皆様にご担当いただきました。

リハーサルスタジオはもとより、レコーディングスタジオや、テレビ朝日やJ-WAVEといった放送局、
さらには東宝スタジオをはじめとした映画制作スタジオなど、音楽・映像関連施設全般の音響設計に携われています。

(左から) 音空間事業本部 葛西 信輔氏 / 後藤 宏明氏 / 福満 英章氏 / 出口 公彦氏
社長より「一流が使うスタジオなのだから、音響設計も一流を集めよう!」の掛け声から、
このメンバーを選び、今回の改修に臨みました。

本プロジェクトの設計を主導された音空間事業本部シニアエンジニアの福満様とアドバイザーの出口様は、この分野で約45年にわたる豊富な経験をお持ちのベテランエンジニア。

スタジオの防音設計について、かつては「NHK仕様」と呼ばれる厳格な基準に則ったスタジオ設計が主流でしたが、時代とともに音楽のジャンルや用途が多様化し、どこにコストをかけて最適化するかという柔軟な設計が求められるようになってきたとの事。

また、リハーサル、レコーディング、映像、配信など、スタジオの種類によってもそれぞれ求められる音響性能が異なるというお話を伺い、すべてのカテゴリーに対応するには相当なご苦労があり、長年の経験と知識が不可欠であろうと感じました。

今回の工事においては、建物の構造的な制約がある中で、重量、コスト、および工期とのバランスを考慮しつつ、最大限の遮音性能を引き出すという、極めて難易度の高いプロジェクトを成功に導いて下さいました!


以上、今回のブログは「改修工事の裏側」に迫った長編となりましたが、いかがでしたか?
今回の改修で見えない部分にこそ、専門家の知恵と技術が詰まっている事を改めて教えてくれました。

今後も芝浦スタジオは皆様の本番に向けたリハーサルを最高の環境でサポートできるよう、さらなる進化を目指してまいります!